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研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。

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今回は 眼科諸流派の秘伝書 (20)

29.『黒滝流眼病療治伝』です。

 

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眼科諸流派の秘伝書(20)


29.黒滝流眼病療治伝

 秘伝書の書名には流派名を冠する場合が多く、一般的には天真流とか南蛮流、あるいは八幡流という様な相伝者個人名とは別の名称が付けられているが、一子相伝の場合でも相伝者自身の名前をとって何々流とした例も少なくない様である。この黒滝流もその類と思われる。

『黒滝流眼病療治伝』は黒滝源意、黒滝源達によってその秘法が伝えられたものである。
本書はおよそ30葉、全1冊(15×18cm)、紙コヨリで綴られた冊子にして、片仮名交りの和文で記述されている。本書の主な項目には次のものが挙げられている。


眼目配五臓論並五輪図
眼目名鑑七十二症
薬製調合
黒滝流秘薬
黒滝流秘法

 この黒滝流の眼病理は中国明代の眼科にみられる五輪八廓の説、陰陽虚実の説にもとづき、眼病の病因を五臓六腑と眼との関係に求めている。

眼目名鑑七十二症とは"月目"を初め眼病72症を列記し、これに簡単な病態を書き添えてある。ソコヒの種類には青ソコヒ、黄ソコヒ、赤ソコヒ、白ソコヒ、黒ソコヒ、火ソコヒ、水ソコヒ、膿ソコヒ等が挙げられ、その説明によれば、

火ソコヒ: 白目カバ色サシ、黒目サビ鉄ノ如ク、瞳子色悪ク、見エザルヲ云ウ 
水ソコヒ: 白目浅キ色サシ、黒目藤色ノ如ク、見エザルヲ云ウ
白ソコヒ: 白目白色サシテ、黒目ハ白紛ヲ薄墨デ解夕如ク、色悪ク、見エザルヲ云ウ
膿ソコヒ: 白目色悪ク、黒目光ナシ、瞳子白酒ノ色デ、見エザルヲ云ウ

この様な要領で記されている。

 製薬調合の項においては、養癒湯(一切虚眼之服薬)、利眼湯(一切実眼之服薬)、雲切真珠散、黄○(=くさかんむりに金)紙、紫雲紙(月日、風眼、ヤミ目、症目、雲目、打目、出目、ハレ目、目星、 目カサ、 目草、 ウミ目、眼狼、ヒラカケ目、眼父二効ク)これら調合の処方を記している。 黒滝流秘薬として挙げられている代表的な処方に麝香、龍脳、寒水石、龍骨、狼眼石、鳥賊葛紛等を調合するもの。

 掛薬として狼眼石、逢砂、寒水石、真珠、石膏、龍骨、ボレイ、烏賊、虎肉、活石、ヤウカイ、蛇骨、キク明石等を調合して用いられた。また、血目、タダレ目の洗薬としてタンハン、 ロクショウの調合も挙げられている。この外黒滝流の秘薬として記されているものに、龍脳散、正明散、清明散、丹珠散、虎明散、清眼膏、清眼散、真珠散、白盤散、養生散、大真散、明上散、赤薬、洗薬、白龍散、大一散等がある。

 このように本書は黒滝流眼科の秘伝書であるが、本書はまた、その秘薬処方集ともいえるもので、本書を通してみる限り、黒滝流眼科は薬物治療を以って一家をなしていたものと考えられる。

 

 

 

(1983年 8月 中泉、中泉、齋藤)

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