研医会通信  20号  2008.2.6
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このホームページでは、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は『審視瑤凾』(2)です。

 

財団法人研医会図書館 利用案内

研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。


所在地:      中央区銀座 5−3−8 
交通:       東京メトロ銀座駅 徒歩5分 ソニー通り  
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審視瑤凾(眼科大全) (2)

 

 

 次に本書の流布本であるが、明末清初版と思われる中にも内容的に大差は認められないが、二、三の蔵板所の異なったものがでている。筆者の手許にあるものを挙げると次のものがある。

1)
傳氏眼科審視瑤凾(眼科大全)、酔○(田に井)堂、煥文堂 蔵板、明未清初刊。
2)
傳氏眼科審視瑤凾。済世堂、明末清初刊。
3)
傳氏眼科審視瑤凾(重訂眼科大全)。 金?巽記蔵板、明末清初刊。
4)
傳氏眼科審視瑤凾(眼科大全)。酉酉堂蔵板、 明末清初刊。
5)
傳氏眼科審視瑤凾(眼科大全)。経国堂蔵板、 天保10年写。
6)
傳氏眼科審視瑤凾。江戸末写。
7)
傳氏眼科審視瑤凾。(校正増図 眼科大全 附彩色 眼球全図、眼科捷経)。6巻全1冊、 上海進歩書局校印、清末民国初刊。


 上記の刊本1)〜 4)は何れも刊記はない。また、何れも崇祓甲申 陳盟の序文がないが、写本には何れもその序文がある。また、 7)は原本を校正増図し、彩色眼球全図、眼科捷経等を附加し、石印版にて上海進歩書局より刊行されたもので、校正増図にはそれぞれ以下の様な図解が付けられている。

第1図解 搭頭枕:  諸般手術皆用此枕宜将藤片編成或熟皮包木以製造亦可也、此要令患者頭不轉側也。
○風鏡: 患眼之人歩白地時掩○砂塵躱避光輝或保養視力皆用此器宜用薄板或厚紙造之。
甲、 外面図孔可貼著白玻○然僻地若欠玻○須以緑紗代之。
乙、 左右両小孔發洩蒸發気之處也。
丙、 左右絲縄用以繋於耳朶。
第2図解 滴水器:  此以硝子製造者令水薬點滴於目中之器也。
第3図解 洗眼器:  此以軟綿布包薬繋縛木柄以洗蒸眼
第4図解 蒸眼器:  此将沸熱藥湯盛於磁碗掩覆軟布置在機上以薫蒸眼日。
第5図解 浴眼器:  此盛薬水於器中冷浴眼目之器也、 用硝子或磁器製造之、若遇闕用則代用酒鐘亦可也。
第6図解 貯汁袋:  此以温湯句貯袋中以手徐握之、則自口注射而灌入胞瞼内洗浄砂塵入目者。或眼目出血者宜灌令水。
甲、曲頭: 捜索飛塵深匿胞瞼裏者。甚便。
乙、 螺轉: 接袋口處
丙、 直頭: 曲直両管皆用銀或角。
丁、 接續袋口之處亦設螺轉以便復抜
庚、 皮袋
第7図解 小水銃:  以薬汁灌洗涙管漏之器也、以象牙造之、若遇闕用、則代用酒鐘亦可也。時毛根微細難見者、或窺内翳及天稟雀目等皆用之。
第8図解 温金:  1号: 治爛弦風、沈痼翳膜及有熱眼疾。将此器置在於温湯或熱灰中令温暖適度、揚擦眼胞上、以温散其毒、以銀、或黄銅造之、器尾作匙頭者、令便滴點薬、或翻轉眼胞也。
  2号:鉄造者、二三両具、皆古製不便。
第9図解 點薬匙:  點著煉○剤之匙、以玳瑁或牛角造之。
釉薬管:  吹送點著研未剤於翳膜上之器也。多用銀造之、鳥翅管亦可也。測瘡子: 1号: 銀造者、宜用倫鍼眼之類用力圧出濃液或探診瞼著眼珠等。2号: 繊細鯨髭製造者、探涙管漏必用之。
第10図解 鑷(ジョウ=けぬき)子: 1号: 抜去睫毛内刺、及麥芒竹木刺宜用之。
2号:  予倣漢製所創造者、至於掲起嚢翳及努肉攀晴或夾出赤脉却優於鉤尖。
3号: 抜去微細物西洋用此器然不如2号鑷子適用。
第11図解 薬箇:  因眼目疼痛而項背拗急、上衝頭痛者切禁導引摩擦及災火、恐有擾乱其毒、惟有此薬箇能洩出抑鬱之耶、先将三稜鍼刺破眉井、或瞳子○(穴に卯)之邊、宜用之令吸血矣。
三稜鍼:  形似柳葉而尖利者、宣以用刺破諸部截開瘡瘍矣。
甲、 螺轉: 令尖鋒長短適度
乙、 鍼管: 小鋒鍼、破潰倫針麥粒瞳白膜、腫瘍瞼生風粟之類之針。
第12図解 披鍼:  風眼疫眼及係多血之眼目刺尺澤委中而放血之器。
  横裁刀 ○(火に欣)腫眼疫眼、風粟稗瞳之類、諸般属熱之眼目、横截胞瞼裏面而瀉血之器也。施用之、宣軽下手、若截痕深則○(やまいだれに全)後、其瘢痕變頑硬之質宜慎焉、眼胞瀉血之法、各家不同有将龍骨或燒鹿角、貼著胞裏剥脱表皮、或用麥芒燈心之類摩擦胞瞼.或針頭乱刺者、然○(石に參)疼嗇痛殊甚、皆是庸工之手段不可施用也。
  l号: 従来所用、

 
2号:予門所常用優於古製。
第13図解 竹夾:  緊夾睫毛内刺上瞼低垂等症則経日贅皮白枯剥此具世間所通用者也.
甲、 将竹夾挟贅皮図
乙、 用絲緊結之図。
銅夾:  今世西学家所用者 螺轉、則自緊閉密合挟定贅皮優於竹夾。方鑷子。子所創製之器也、将截断贅皮先用之以緊夾患部以彎頭鋏剪断贅皮用針縫合創処。此術急速且瘢痕無展開之慮。
彎頭鋏:  瘍科所用者
鍼:  此用蝋絲穿之、甲、截断贅皮図、乙、用絲縫合図。
第14図解 按定環:   1号:以銀造之刺内翳及施諸般之手段使眼不得運動。甲、用棉花纏絡之。
        2号:子所創造用玳瑁或牛角比l号大有便宜。
第15図解 小烙鉄: 1号:此烙頑騎及血脈之具。  2号: 截開嚢翳後烙所存贅膜、或除眼庁腐肉、宜用此具點一點。
第16図解 大烙鉄:  1号:○(火に欣)腫眼疫眼之類疼痛劇甚而手難近者。以棉布浸薬汁、安置眼胞上、先令烙鉄投火通紅離絶胞上五六寸許以火気徹透而疼痛漸和心覚快哉為度。
 2号:施用同前
第17図解 釣:  嚢翳及血絡将截断時用之勾起。
直剪刀:  剪断血絡之器。
曲鋏:  用法同上。
小彎刀鋏:  断絡根、剪○(やまいだれに息)肉、或要用剪刀於微細虚部則此器為便。
第18図解 尖鋭刀:  血灌瞳人水様液混濁眼珠膨脹及截開角膜而漏浅汚液皆用此器。
偏刃刀:  此刺因眼瞼○(火に欣)腫而血絡怒脹者、或縦截涙管漏嚢、此器以偏刃、無傷損別部之慮。
第19図解   眼科手術以針刺白膜翳為至難焉先審察其治不治、撰定用具応手與否為要焉如内翳璧察治詳論於本編宜封照、今摸寫内翳針数本以示後学。
圓鋒鍼:  以鉄造之宜用墜下内翳。
三稜鋒:  自白膜横刺而圧下内翳甚便、鋒頭鋭利細尖為要。
曲頭鋒:  此具刺内翳時便。以右手施術右限西説所謂以左手刺右眼者、実非良術也。
圓針:  各家従来所用者、以金銀造之。鋒頭鈍劣而不及鉄造者加之庸拙之徒臨術恐懼或未熟之輩用此鈍鋒護下手一刺遂成不治之盲不可不察焉。
三尖針: 有用此針以刺角膜正中者、然除去内翳之後瘢痕生翳透明此具断勿取用焉。
内翳針刺図解  
1図:  左手将按定環按著眼珠、右手把針刺眼圧下内翳図宜使針鋒到於瞳孔中。
2図:  示針頭刺白膜之部位。
3図:  三稜鋒刺左眼之図
4図:  曲頭鋒刺右眼之図、用圓鋒針亦同焉。

  中国明代から清代にかけて著わされた眼科専門書は、その大部分がわが国へ伝来されたものと思われるが、その中で最も広く用いられたものは唐、 孫真人思逝原輯『銀海精微』(寛文8年刊)、哀学淵著『眼科全書』(貞享5年、寛政3年刊)、醇巳著『玄機啓微附録』(承応3年刊)、傳仁宇纂輯、傳国棟編集『審視瑤凾 』(明末清初版またはその江戸時代写)等で、それらは江戸時代中期以降、わが国で最も伝統のある馬島流眼科を始めとする諸流派の秘伝書作成や眼科治療法に盛んに採り入れられた。

この様に『審視瑤凾』 は内経論、運気の語を以て広く中国、明代の眼科(五輪八廓説)をわが国に伝えた、中国中世眼科専門書の一つである。


主な参考文献

1)
小川剣二郎: 稿本日本眼科小史.38、吐鳳堂、東京、 1904.
2)
廖 温仁: 支那中世医学史 110、 ヵニャ、 京都、1932.
3)
福島義一: 日本眼科全書1.日本眼科史、26、金原出版、 東京、1954.
4)
河本重次郎: 日本眼科の由来及日本に於ける蘭学の本源につき 日眼、4:187、1900.
5)
山賀 勇: 日本古代眼科略史. 臨眼、 9: P.718〜723、 1955.
6)
謝観: 中国医学大辞典 2663、商務印書館、 上海、1955.
7)
伊東弥恵治: 日本医史学雑誌 No 1313、 P.122-127、 日本医史学会、 東京、1943.
8)
日本学士院: 明治前日本医学史 4. P.233、 日本学術振興会、 東京、1964.



*表示できない文字、あるいは不明な文字を○で置き換えております。ご了承ください。


 

図6 傳氏審視瑤凾(校正増図眼科大全) 表紙 清末明国初刊


 

図7 図6の器具の図説ページ

 

 

図8 審視瑤凾 巻4所載眼科手術器具 明末清初刊。図中、割り刀はデスマル氏乱切刀によく似ている。

 

   
 

図9 審視瑤凾(明末清初刊) 巻之首所載の八廓定位之図。下の本は五輪定位図と誤っている。

 

 

図10−1 古今精選眼科方筌 扉

嘉永3年(1850) 刊

図10−2 古今精選眼科方筌 後編巻頭

『審視瑤凾』はこの『眼科方筌』にも引用されている

 

 

 

(1980年9月 中泉、中泉、齋藤)

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