眼科諸流派の興りを考察する場合、寺院との係りを探ってみることが多いが"玉泉"という名のつく寺には伊豆下田にあるタウンゼント・ハリスで有名な玉泉寺、中国湖北省営陽県玉泉山の山麓にある玉泉寺(隋の開皇12年天台大師が隋の場帝晉王広に請うて建立)等があり、中国ではその後、玉泉の名は天台宗の異称として用いられるようになったといわれる。また馬島流分派には五流五家があって、その五家の中に玉泉坊という一家が含まれている。『玉泉房流書伝集』が前記と係りがあるや否や不明であるが、本書に伝えられる記述によって玉泉房流眼科を窺知してみよう。
によって眼病論を説いた眼科流派とみられるが、その眼疾諸症と治療法を記述した主なものには『玉泉房流眼目秘伝書』『玉泉房東暾秘録』『玉泉流眼科秘伝書』『玉泉房流伝書』『秘密目伝玉泉房流』等が伝えられている。これらの秘伝書は何れも記述内容の面では大差はほとんどないが、秘伝書の相伝者および書写年代の相違から、中には漢文のもの、和文のもの、あるいは『玉泉房流書伝集』のように4巻に分けて記述されているものもあり、また、小切紙書として記述されているものもある。
『玉泉房流書伝集』はおよそ80葉、全1冊横長本(14.5×19.5cm)、 片仮名漢字混合の和文で記述され、全体を4巻に分けている。その主な記述項目は次の通りである。
本書には『目ハ肝、心、牌、肺、腎、五臓ノ精トシルヘシ、黒目、瞳子ハ肝腎ノ二臓ナリ、上気シテ其精目病ヲナスナリ』と教え、「先病人二向テ目ノ善悪ヲ見ルコト水ノ底ヲ見ルガ如ク、目ハ是一生ノ鏡気ノ束ナリ、
目ヲ見ルコト病人ノ心二随テソノ当ル処ヲ見ルコト第一ナリ、病人ノ心二違フコト勿レ」と心得を示している。
このように本書に述べられている眼科は明らかに中国古代の医説によるもので、つまりその基本的病論を『内経』に求めて説かれている眼科とみることができる。しかし、玉泉房流眼科としてわが国に何時頃如何なる人によって招来され、創められたかという点については未詳である。『稿本日本眼科小史』(小川剣三郎著)によれば『玉泉流書伝集』の写本に享保18年(1733)とあり、
また、『山崎文庫目録』(順天堂大学)に所載の『玉泉房流書伝集』の裏表紙には慶長5年(1600)の書写年記が認められるときく、かかる点からみれば玉泉房流眼科は少くとも慶長年代以前に存在していたのではなかろうかと思われる。
沼田 頼輔: |
現存中最古の眼病祈願状、 実眼, 3: 240、1920 |
小川 博: |
義経眼病祈願文( 筆蹟) 実眼, 12: 67、1929 |
小川剣三郎: |
市畑の薬師、 実眼, 1: 211、1918 |
〃 |
家里流眼科 実眼, 1: 479、1918 |
〃 |
家里伊賀守 実眼, 1: 480、1918 |
〃 |
家里伊賀守 実眼, 1: 555、1918 |
〃 |
市原横歛、家里梅慶 実眼, 1: 555、1918 |
〃 |
市原光蓮、牢人目医者。 実眼, 1: 555−556、1918 |
〃 |
家里流眼書 実眼, 4: 196、1921 |
〃 |
南蛮眼目療治書 南蛮流眼目薬性、 南蛮流見立、點服、 薬方.
実眼, 14: 206、1931 |
〃 |
南蛮流眼目療治之事、 ゑなみ流眼目療治極書 実眼, 14: 207、1931 |
愛知県医師会 |
愛知県医事風土記 9、 23、 27、 104、107、 114、 150、 156、
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壺坂寺―眼に因んだ寺社縁起―(2) 銀海、39、大阪、1968 |
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久米寺―眼に因んだ寺社縁起―(3) 銀海、40、大阪、1968 |
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馬島明眼院―眼に因んだ寺社縁起―(4) 銀海、41、大阪、 1968 |
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唐招提寺一眼に因んだ寺社縁起一(5) 銀海、42、大阪、1968 |
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