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このホームページでは、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は 眼科諸流派の秘伝書 (15)

24.『家伝秘用方』です。

財団法人研医会図書館 利用案内

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眼科諸流派の秘伝書(15)

 

24.家伝秘用方

 秘伝書には門人などがその師から直接伝授されるものと、ある旧家に代々伝えられる秘方が家伝として次代に受継がれる秘伝書がある。

 この『家伝秘用方』はその後者に当るものであるが、この写本の奥書によると、これは文禄5年(1596)に大月寿斉仙隆より江森平右衛門に伝えられた家伝の秘方とみられる。

 本書は墨付紙数56丁、同じく45丁の巻1、2、の2冊よりなり、 コヨリ綴り横長本(19×26 cm)、和漢文にて記述された閲読者の朱入本である。内容は各種疾病に対する薬物療方をのべたもので、疾病の分類等は一応部門別となっているが、各種病門により列記されている。

目録に掲げられた病門は59種、以下その名称を挙げると、

 中風、傷寒、寒、暑、湿、瘧、 痢、 嘔吐、 泄瀉、 霍乱、秘結、咳嗽、痰気、喘急、 諸気、 牌胃、 翻胃、 諸虚、労擦、咳逆、頭痛、 心痛眩量、 腰脇痛、 脚気、 五痺、五疸、蟲毒、諸淋、消渇、赤白濁、水腫、脹満、積衆、宿食、 自汗、虚煩、健忘、 癩癇、 陰○(やまいだれに頽)、 痼冷、 積熱、吐血、下血、痔漏、脱肛、遺尿失禁、眼目、耳、咽喉、鼻、口舌附唇、牙歯、癰疽、瘡(○=セツやまいだれに節)、婦人、胎前、臨産、産後、小児等で、これら病門の下に、その治療に用いられる薬名と薬能および処方を記述している。

 眼目部には揆雲散(風毒上攻眼目煩赤腫爛一切風毒眼疾ヲ治ス)、洗肝散(風毒上攻俄熱気発目赤腫痛ヲ治ス)、菩薩散(風気攻目腫痛ヲ治ス)、明眼地黄円(目ノ内薬)、加減菩薩散(家伝)、四物湯、家伝洗薬等が挙げられ、これらの薬物はこの頃最もすぐれた眼疾治療薬として家伝の秘薬となったものと思われる。しかし、この秘伝書を見る限りでは、眼病の細かい病名分類等はみられず、また手術療法なども記されておらず、眼疾一般の治療に用いられる薬物が挙げられているにすぎない。これは本書が眼科専門書ではなく、病門分類が多分に全科にわっていたためとみられるが、当時の眼病分類が十分進んでいなかったことを意味すると思われる。

 この『家伝秘用方』には多数の引用書が挙げられ、例えば『鴻宝書』、『世医得効方』(危亦林)、『医書大全』(熊宗立)、『福田方』(有林)、『医方大成論』(孫允賢)『和剤局方』(陳師文)、『素間』(王泳次註)『全九集』(月湖)等書名が書き込まれている。また、諸家の処方として曲直瀬道三流、竹田流、半井家の方、浅見大覚方等よく採り入れられたようである。

 このように本『家伝秘用法』は中国明代以前の医方を基本に、また、わが国安土桃山時代の著名医家、曲直瀬、半井等の処方をも採り入れた江戸時代以前の薬物治療方の一端を窺うことのできる薬物治療処方書である。

 

 

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図1 『家伝秘用方』 巻2の目録。

文禄5年(1596) 大月寿斉識。

 

 

   
 
図2 同書 「眼目部」
 

 

   
 

 

図3 同書 奥付。大月寿斉から江森平右衛門へ。

相伝者の識語と花押。

 


 

 

 

(1983年 3月 中泉、中泉、齋藤)

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