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研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。

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今回は 眼科諸流派の秘伝書 (18)

27.『治眼通言』 です。

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眼科諸流派の秘伝書(18)

 

27.治眼通言


 馬嶋流眼科の分派には「五流」「五家」という言葉が使われた(野田 昌編著、『馬鳴眼科と明眼院』)といわれているように、その分派による幾つかの系統があった。今日伝えられている、いわゆる馬嶋(真嶋、麻嶋)流眼科の秘伝書といわれる古写本の中には「此之書者真寺坊三河国鳳来寺* 薬師如来十七日参籠満暁医王善逝尊夢想直伝之書也」というその書の由来をしるす数行がまま見られ、 この霊告鳳来寺祈願伝受による法は馬嶋明眼院に対抗する馬嶋大智坊(明眼院の塔頭)が主唱してきたこととされているが秘伝書の本源については少なからず興味をそそられるところである。

 本書の著者は赤松定著となっているが料紙、文字の上からは時代的には新しい写本と思われる。本書はおよそ30葉、全1冊(19×13.7)、本文は片仮名交り和文で書かれている。

 本書の内容は真嶋流等諸家の伝方を以下の項目によって記述したものである。

治眼通言 巻之上 諸家伝方
真嶋漢項小項 灌頂 小鏡 薬性論
竜脳、白磐、光明丹、石羔、麝香、焼竜脳、蓬砂、辰砂、雀貝、生脳、蛇骨、白丁香、寒水石、牡冷石、茗石、石叟明、貝歯、天石、赤石脂、根石、汞粉、麒麟石、代赭石、白竜石、角石、青石、能膽、真珠、雀子、芦眼石、貝石、黄石、白石脂、虎骨、陽貝、決明子、虎肉、石鏡乳、楼石、氏羽、丹石、血巡、元石、黒眼、 日肝
以上45味の功能製法

眼目薬方巻
金竜丹、蜀竜羔、蓬砂散、催明羔、金竜散、黄石散、明朱散、麒麟散、石羔散、貝歯散、雀貝散、金箔散、病目薬、青石散、真珠散、白石散、白丁香散、竜脳散、辰砂散、明星散、虎肉散、明珠散、竜脳羔、虎胆散、大真珠散、眼明羔、滑石散、黄石散

眼良方 巻中
藤膜、簾膜、杉膜、浮膜、天膜、大婆星、アマノジャク、痘瘡目、爛目、サカマツゲ、努肉、月輪、 クボミ、ツリ膜、スマル星、 ワンス、内障七色

眼良方 巻下
眼洗湯、眼蒸湯、頭下之方、葛根湯、自木散、蘇木湯湯、○(ユウ)活湯、四物湯、香蘇散、洗眼明目湯、星目洗薬、明眼滋腎湯、参○(キュウ=くさかんむりに「弓」)湯、 目ノ玉出タルフ入ル方、洗肝湯、竜胆湯、散熱湯、和血湯、滋陰丸、保肝丸、六味丸、益陰腎気丸、防風通聖散、

本書に記述されたこれら各処方および治療法は円蔵坊、実相坊、宝林坊、昌雲斎、天桂入道、林斎入道、弁庵斎等諸家の伝方が採り入れられたものである。その相伝者系譜を次のように揚げている。

右ハ当家一流秘伝巻物莫他見矣
眼書元素 養良元年渡唐天平五朝○(「白」の右に「反))ル
吉備大臣  宥子大臣  白子大臣  円蔵坊  実相坊  宝林坊  下総守  舜○(コ=りっしんべんに「古」)斎  昌雲斎  天桂入道  美濃守林斎入道

右之○(「昼」の「一」のない字)唯一人之外○(「ム」の下に「虫」)無相伝依上意一秘不残謹灌項沫秘巻等○(マデ=「占」にしんにゅう)令伝受者也

薬師十二神御罰―字不秘 謹
目嶋休斎入道 在判
友延孫之 進畢
東遠伊豆守入道 在判
野村弁菴斎
同 玄碩 在判
右之○(「昼」の「一」のない字)○(「ム」の下に「虫」)為代々秘密不残一秘令相伝者也一子相伝之外他見有之間布者也

八月
また、別本『馬嶋眼書』(甘瞑堂用箋)なる古写本には本文内容は『治眼通言』眼良方巻下とほぼ同様であるが、巻末に眼書元祖として次のような系譜を掲げている。

眼書元祖
仮備大臣〔養良元年丁巳渡唐十七年天平五癸酉年仮朝〕宥子大臣―白子大臣―〔此代ヨリ圓蔵坊マデ二十代略ス〕圓蔵坊―実相坊―宝林坊―下総守―舜怙斎―昌雲斎〔此代ヨリ天桂入道マデ二十代略ス〕―天桂入道―美濃守―林斎入道

右此書唯授一人之外○(「ム」の下に「虫」)親子無相伝依上意一秘不残謹潅項沫秘巻等?令伝授者也

謹 薬師十二神御罸可蒙者也
  目嶋美濃守林斎入道 在判
友延孫之尉殿進畢 ―野村弁菴斎― 野村玄碩 在判
 此書○(「ム」の下に「虫」)為秘密不残一秘令相伝者也
 一子相伝之外他見有之間敷者也
  元禄二巳年
  天保十一年子四月
    馬嶋明眼院
  園田宗伯老

この『馬嶋限書』はその記載されている年号より考察すれば、元禄2年頃の記述による秘伝書を天保11年4月、馬嶋明眼院より回円宗伯とへ書写相伝されたものと推察される。

『治眼通言』は主に薬性論を記したものであるが、本書に掲げられた相伝系譜によればその本源が古く奈良朝にまで溯っているということがわかる。

* 烟厳山鳳来寺。高野山真言宗。宝来寺、 蓬莱寺等と
もかく。(三河国) 愛知県南設楽郡鳳来寺にある。大宝
3 年(703)文武天皇勅願による利修仙人の開創と伝え
られる。本尊薬師如来は峯薬師とよばれ、 日本三薬師
の一つ、 仏法僧の鳴き声は有名。

 

 

 

 
 

 

図1 『治眼通言』 表紙

 
   
 

 

図2 図1同書 巻頭

 
   
 

 

図3 図1同書 末尾の眼書相伝系譜

 
   
 

 

図4 『馬嶋眼書』 所載眼書元祖系譜@

 
   
   

図5 『馬嶋眼書』 所載眼書元祖系譜A

 

 

 

(1983年 6月 中泉、中泉、齋藤)

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