図1 『本草綱目図鑑』巻上の最初 李時珍:著
明代、李時珍の著した『本草綱目』(1596)は編集方法など画期的な本草書でした。日本では、慶長12年(1607)に林羅山が長崎で入手して駿府の徳川家康に献上されました。それまで宋代に唐慎微がまとめた『証類本草』が日本で使われる本草書の基本であったのが、これ以後、『本草綱目』となっていきます。
今月は、所蔵の何種類かの『本草綱目』のうち、着色されている図鑑をご紹介します。書籍は1冊のみの零本で、桐の箱に入れられています。箱の蓋には「本草綱目圖巻 一冊」と墨書があり、表紙には「設色本草綱目圖」という題箋が貼られています。文字の巻より、絵のある冊だけが大切にされたということで、残念ではありますが、木版で印刷した後に手描きで着色したことを考えると、その手間はかなりのものですから、この巻のみが大切にされたことも理解できます。
小野蘭山没後二百年記念誌『小野蘭山』収載の「蘭山の視点 ―『本草綱目啓蒙』の植物解説について」(邑田仁・邑田裕子)を読むと、「蘭山は、当時としては高いレベルにあった中国の李時珍の『本草綱目』に学ぶとともに、それを好敵手として、自分の発見能力を試し、『本草綱目』を我が国なりに改訂することに喜びを感じていたのではないかと思われる。その結果、見方によってはとりとめも無いが、活きた情報にあふれた『啓蒙』が完成したのであろう。」と述べられています。
素晴らしい本草書であることは認めるとして、やはりそれを日本で使う場合には植物も異なり、わが国ならではのことがらも多いため、日本で使える本草書を蘭山は目指したのでしょう。『本草綱目啓蒙』を見るにあたっては、ぜひ、この好敵手『本草綱目』に目をとおしたいものです。
図2 書籍の入っている木箱
図3 『本草綱目図鑑』表紙
図4 同本 序文
図5 序文の最後
図6 同本 草部山草類 最初のページ
図7 同本 草部山草類 つづき