新たな年、2024年の最初は眼科書籍を取り上げます。名古屋近郊の一山全部が眼療の施設であった「まじま」流の本です。なぜ平仮名で書いたのかというと、「まじま」の表記には馬島、馬嶋、馬嶌、間島、間嶋、間嶌、麻島、麻嶋、真島、真嶋、摩嶋、満島というように、さまざまなものがあるためで、それぞれの流派の本にはかなり共通の内容が書かれています。
研医会図書館には45の「まじま流眼科書」がありますが、今回は『馬島流眼療秘方書』という写本をご紹介します。
この本はおそらく6~7種の眼科書の内容をひとつにまとめたもので、中には眼科医療とは言えない器の焼き方に関する情報まであります。眼科の療治に使う目洗い薬や点眼薬、また目の周囲を拭うという時、何かしらの器は使うので、全く無関係とまでは言えませんが、眼の治療と共に焼物の焼成法という別の技術も伝えられたのでしょう。
さて、本の内容は、
【第一の本(書名なし)】
目次14項目 14項目それぞれに関して合計49の処方
【第二の本 瑠璃子之書】
1処方 二味の処方と症状との対応表二二〇種、難瘡ノ薬出是
【第三の本(書名なし)】
五蔵と五行説についての対応の箇条書き、「眼療ノ秘方」心得の第一
【第四の本(書名なし)】
眼病の症状の列挙 21症状の解説
「右二十一ヶ条之大事也 尾州馬嶋流 慶長十三申年六月 光明寺」
【第五の本(書名なし)】
6処方「万目ニ忌叓」「目ノ見様ノ叓」「薬種論」「目薬調合」8処方
「外療門」9処方
●器の焼物に関する調合法
「瀬戸物薬方」「建盞」「同破笠」「色絵ノ具」
【第六の本】五輪八廓説の図と説明
【第七の本】病目の図と解説 処方5種「口伝巻」「目洗之叓」72処方
となっています。
所蔵の眼科秘伝書の中には、たとえば「目ノ見様ノ叓」など、本書に含まれるひとつの項目だけが1冊としてまとめられているものもあります。丁寧な整った文字で写されたこの書物は、こうしたばらばらの口伝書や相伝などを集めて編集したものではないかと思われます。
図1 『馬島流眼療秘方書』表紙
図2 同 処方のページ