『啓迪集』(すなわち『察証旧治啓迪集』(内題)は正観町天皇の元亀2年(1571)に曲直瀬(一渓)道三によって編述された桃山時代を代表する察証旧治の全書で、全8巻よりなり、漢文で書かれた医書である。
巻別に疾病の門を挙げると、
第1巻 |
中風、傷寒。 |
第2巻 |
中寒、中暑、中湿、瘧疾、痢病、泄瀉、?嗽、痰飲、喘急、水腫、脹満、積聚、霍乱、嘔吐。 |
第3巻 |
翻胃、頭痛、心痛、腹痛、腰痛、脇痛、脚気、痿證、痛風、痺證、黄疸、消渇、淋病、疝気、血證、衂血、嘔血吐血、咳血痰血、下血、尿血。 |
第4巻 |
諸気、諸虚、内傷、勞?、汗、??動悸、健忘、眩暈、秘結、燥、火熱、尿濁、遺精、遺尿失禁。 |
弟5巻 |
陰禿*、鬱、心下痞満、アク(げっぷ)逆、諸虫、吐酸、中悪、狂癲、シ(ひきつり)證、痔漏、脱肛、ハン(斑点)疹、損傷、眼目、耳病、鼻病、唇舌、咽喉、牙歯、鬚髪。 |
第6巻 |
瘡瘍、破傷風、癩風、救急、老人、老人諸証、大低并扶老全真捷 |
第7巻 |
婦人 |
弟8巻 |
小児 |
等の門に分けられている。
『啓迪集』は道三流医術の集成であるといわれ、「軒岐以来百家の書、ことに『局方発揮』(宋彦脩撰)、『玉機微義』(徐彦純撰)、『丹渓纂要』、『医学正博』(虞摶)等の所説により、岐・黄の問答(黄帝素問の書を指す)を以て医の法とし、臨機応変を以て医の意とし、医、意を以て聖法を用うるを主張するものにして、57則を設けて道三流の要旨としている」(富士川游著『日本医学史』) また、この57則を道三流派の秘訣として1枚の紙に認めて、その門弟に授けたものが道三切紙といわれるものである。
『啓迪集』はその引によるとおよそ64部の書籍を引用していることを示しているが、その主なものには『格致餘論』(李杲撰)、『此事難知薬』(李杲撰)、『脾胃論』(李杲撰)、『蘭室秘蔵』(李杲撰)、『丹渓心法』(方廣撰)、『丹渓纂要』、『医学正博』(虞搏)、『玉機微義』(徐彦純撰)、『傷寒百問』(朱肱撰)、『医林集要』、『明医雑著』(王綸著)、『袖珍方』、『恵済方』、『医方選要』、『全九集』(月湖)等々があり、特に『医学正傳』(8巻)や『玉機微義』(50巻)などは道三が常に座右にして閲読し、『啓迪集』を編するにあたってもよく参考にしたようである。
『啓迪集』の中の眼科はその第5巻に"眼目門"を設けてのべられているが、その項目をみると『玉機微義』、『原機啓微付録』(薛己著)などのものと大変よく似ている項目もある。
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